CES(Consumer Electronic Show)に物理的にまたはバーチャルに参加すると、誰しもが圧倒されます。デジタル革命前から存在する消費財メーカーの方は、無限のオプションの中で一体何に注目すればよいのでしょう?
5年程前、私はこの問題に直面しました。当時、私はColgate-Palmolive社に勤めており、コネクテッドデバイスがヘルスケア分野およびサブカテゴリに変化をもたらすと確信していました。非テクノロジー企業にとって、市場、消費者、企業自身が、可能性に気付いていない早い段階から様々な選択肢を試すことは、投資やリスクを最小限に抑える最適解でした。
コネクテッド製品の市場がどのように急速に発展しているのかという重要な知見を、CESで得ることができました。他社の製品からインスピレーションを得たり、アイデアを再定義し自社のビジネスに活用することができたのです。VR体験の中には心が躍るような楽しいものがありましたし、自動でかき混ぜる鍋はただただ面白いものでした。いずれにせよ、CESは間違いなく、私の進むべき道を指し示してくれる場だったのです。
正直、早い段階で発売された多くの製品のように、アプリ付きのシンプルなコネクテッドデバイスを作り、実用最小限の製品(MVP)をまず市場に出すという誘惑に駆られていたことも事実です。しかし同時に、それ以上のことを成し遂げられると分かっていました。何故なら、Colgateブランドはより良い未来など何か意義のあるものを象徴しており、コネクテッドデバイスによって刺激的かつ魅力的な新しい方法で証明することができるからです。これは、初期のトライアル製品から、最近発売した Colgate humに至る道のりの基本方針となりました。
消費財メーカーにとっての大きなチャンス
ケンブリッジコンサルタンツは、コネクテッドデバイス分野で多くのブランドと協業してきました。弊社でコンシューマ分野を統括するルース・トムソンは2019年9月、Beiersdorf社Stefan Biel氏およびIoniq Skincare社Valentin Langen氏と共に、パーソナライズ美容の可能性に関するウェビナーを開催しました。パーソナライゼーションは、コネクテッド製品が消費財メーカーへもたらす大きなチャンスの1つです。パーソナライゼーションの実現には多くの課題がありますが、参加者が最も関心を持っていたのは、「ビジネスモデルをどう構築したら良いのか?」ということでした。
バリュープロポジションキャンバスとビジネスモデルキャンバスの発明で有名な、革新的な思想家アレックス・オスターワルダー教授を良く知る人であれば、製品やビジネスモデルには設計と同時に反復が重要であることをご存知でしょう。設計、実装、テストを繰り返すことで製品を改善していくのですが、既に確立されたビジネスやブランドでも、同様の手法が使われ始めると考えています。
「product+」と名付けたコンセプトは、ブランドイメージを強化し、既に確立された良いイメージに基づいた製品戦略です。 例えば、弊社はある美容系のお客様と協業し、ユーザー層の拡大を目的とするコネクテッド製品群向けビジネスモデルを構築しました。極上の体験をエンドユーザーに提供するだけでなく、製品に関わるすべての人にとって価値となるようソリューションを設計しました。
コネクテッドデバイスがビジネスモデルを実現可能とし、そしてビジネスモデルが事業全体を強化する更なる価値を生み出したのです。現在、ペットケア、クリーニング、飲料水など、非常に多様な分野で同様のプロジェクトを進めています。
事業拡大
消費財(もしくは日用消費財とも言いますが)の場合、コネクテッドデバイスはビジネスチャンスというよりも技術的なものと捉え、現時点では取り入れても入れなくても良いものと考えがちです。しかし、コネクテッドデバイスは単なる新技術ではなく、事業拡大のチャンスであると私は考えます。消費財メーカーにとって、今まであり得なかったユーザーと1対1でコミュニケーションする機会を実現する手段なのです。
歯ぶらしのような日常的なルーティンで使うものにディスプレイを加えるのは、一見余計なことのように思えるかもしれません。しかし、ディスプレイを上手く活用できれば、既存ビジネスの域を超えた資産価値とブランド価値を生み出すことが可能です。もし、ユーザーと1日2回2分間コミュニケーションできるとしたら、あなたは何を伝えますか?ひょっとすると、今後のビジネスに非常に大きな価値をもたらすコミュニケーションになるかもしれません。
「product+」に関しご意見やご質問などがございましたら、 こちらまでご連絡ください。