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ケンブリッジに住んでいると、ネオニコチノイド系殺虫剤の使用を禁止するEUの決定に対する討論について最近よく耳にします。イングランド東部は「イギリスの穀倉地帯(Bread basket of England)」でイギリスの穀類の多くがこの地域で栽培されています。

3つの主要なネオニコチノイド系農薬はすでに2013年に禁止されています。EUがトウモロコシや菜種油などの花をつける作物への使用を防止するために投票を行ったからです。しかし、今年4月の決定は、全ての野外作物へのネオニコチノイド系農薬の使用を禁止します。この件については、ご想像のとおり、意見が大きく分かれています。環境保護主義者や有機栽培農家はこの決定を大いに喜んでいますが、産業農家、農民組合、そして農薬業者は、決定が論理的で正しい科学に基づいておらず、ヨーロッパの農業に経済的大惨事をもたらすと抗議しています。イングランド東部では、特に甜菜糖製造業者が不当な扱いを受けていると感じており、花をつけない作物にネオニコチノイド系農薬を使って蜂にどんな悪影響が出るのかと混乱しています。

私も同意見です。殺虫剤は虫を殺すためにあります。では、どんな殺虫剤も蜂を殺してしまうのでしょうか。なぜネオニコチノイド系農薬は他のものより悪いのでしょうか。

タイミングが全て

ネオニコチノイド系農薬は、他の殺虫剤とは異なる作用をします。従来の殺虫剤は接触性のもので、それを噴霧した植物に虫が止まると化学物質が虫を殺します。毒を食べることにより、また多くの場合は毒が皮膚から吸収され虫は死に至ります。なので従来の殺虫剤を使うと、噴霧された植物に止まった蜂はその場でもしくは後で死んでしまいます。

一方ネオニコチノイド系農薬は、浸透性の殺虫剤です。植物自体に吸収されるので、その植物を一かじりした虫は死んでしまいます。名前の通り、ニコチンの親戚で中毒性のあるタバコの毒のように神経系に影響を及ぼします。虫の中枢神経系にある受容体に結合し、中枢神経を遮断し、麻痺そして最終的には死に至らしめます。ニコチノイド系農薬の利点は、虫の血液脳関門しか跨ぐことができないため選択性があります。鳥や哺乳類に対しては毒性が極めて低いのです。

それなら蜂は作物をムシャムシャ食べたりしないので、これは蜂にとってましな殺虫剤なはずですよね。ネオニコチノイド系農薬は植物を食べようとする嫌な虫だけを殺すのではないでしょうか。

残念ながらネオニコチノイド系農薬は、蜂が集める花粉や花蜜にも吸収されていて、そこに問題があります。

蜂が接触性の殺虫剤を噴霧した植物に止まるとその場または後で死にます。これは良くはないですが、接触性の殺虫剤は働き蜂しか殺せないことを示しています。雄蜂、育児に関わる蜂、そして女王蜂は接触性殺虫剤の影響を受けることはありません。働き蜂がネオニコチノイド系農薬の撒かれた植物の蜜や花粉を集めて巣に毒を持ち帰ると、通常であれば殺虫剤に触れることのない他の蜂も殺してしまいます。

なるほど、それはホントにひどいし、ネオニコチノイド系農薬の使用を止める良い理由になります。それに従来の殺虫剤に戻せばいいだけですよね。でもそんなに簡単ではありません。

進化による抵抗

何しろ有機リン酸エステルとカルバミン酸塩の殺虫剤は選択性が低いのです。鳥や哺乳類に対しても同様に毒性があります。実際のところ最近ではより毒性が高いかもしれません。虫の進化はかなり早く、昆虫は接触性の殺虫剤に対してなかなか素晴らしい免疫力を付けてきました。中にはクチクラ層をより厚く成長させ吸収を防いでいる虫もいます。また一仕事する前に毒を分解するタンパク質をより多く発現させることを学んだ虫もいます。トコジラミは、従来の殺虫剤の作用に対してもっと抵抗力を持つよう遺伝的に変異を遂げました。従って、以前より効果が薄れてしまったため、昔の農薬をまた噴霧するわけにはいきません。(これは農家だけの問題ではありません。デルタメトリンのような殺虫剤は蚊のようなマラリア媒介者の主な制御方法でしたが、今はこれに対しても抵抗性を獲得しています。)

環境および有機農法を支持する人々は、ネオニコチノイド系農薬の代わりとなるさまざまなもの(輸作、より効果的な土壌耕うん、線虫の導入)を提案しています。しかしこれらは、それぞれ難題を抱えています。線虫は導入後十分な水やりを必要とし、水量管理が難しくなります。また一種の作物だけを生育している場合もあるので、輸作は必ずしもできるわけではありません。

では、花を付けない植物にネオニコチノイド系農薬を使用するのは問題ないということに対する議論はどうなるのでしょうか。

正確であること

今まで作物への噴霧技術について多くを手がけてきたので、空気の漂流が大きな問題であることを知っています。風の強い日に作物に農薬を噴霧するとうっかり隣家の作物にも噴霧してしまいます。作物噴霧器から出る水滴を上手く大きくして、風で遠くまで飛んでいかないような対策が多く取られています。

しかし蓋を開けてみると、ネオニコチノイド系農薬はそれほど頻繁に噴霧されていません。実は多くの場合、植える前の種に塗ったり、土に散粒したりしています。

蜂の集団が一掃された有名な事故がいくつかありました。ドイツでのある事例では、種子粉衣に接着が不十分な結合剤を使っていたため、圧縮送風機で種を地面に噴霧して撒いた際、摩擦がニコチノイド系農薬のちり雲を作り、近隣に開花していたアブラナへ飛んでいってしまったのです。まさに三重苦。今では、このような問題がまた起こらないようにさらに重たい結合剤が使われています。

もう一つの問題は、ネオニコチノイド系農薬が水溶性で水道システムに入ってしまうということです。一つの畑からもう一つの畑への流出により問題が他へ移行します。帯水層の汚染も疑われていて、ネオニコチノイド系農薬が川や飲料水から検出されたという報告もいくつかあります。このため毒はさまざまな場所に広がり、花をつける植物に吸収される可能性があります。

この問題に対する明確な答えはまだありませんが、使用禁止によって蜂の数が結果的に増えるかをきちんと見ていくことが非常に重要でしょう。また、この問題は精密農業の開発分野がいかに重要かということを強調しています。使用されている化学物質の危険性を知るのはいつも手遅れになってからです。そのため、殺虫剤や除草剤の使用を最小限にする生育システムは今後の農業にとって必要となるでしょう。

このことを知ってから蜂のことだけでなくネオニコチノイド系農薬全般について気がかりになってきました。哺乳類に対する毒性は虫に対する毒性よりも低いため、植物に吸収させる方法での使用が認められています。しかし植物油、小麦粉、野菜、そして蜂蜜を通してネオニコチノイド系農薬を食べてきたと知りやはり心配です。科学者として、物事を数値化することが大切ということは知っていますが、「毒性が低い」というような表現は少し心配になります。ネオニコチノイド系農薬の禁止が蜂群崩壊症候群の解決策になるかは分かりませんが、洗っても落ちない農薬が野菜に使われなくなることは嬉しく思います。

Author
Steve Thomas
Senior Consultant

Steve is a senior consultant in the Applied Science Group and works on integrating chemistry and materials science into product development and systems engineering.