ケーススタディー
この取り組みは英国国防省傘下の国防安全保障アクセラレータ(DASA)から提示された課題に対応したものでした。DASAでは海上・陸上・航空の各領域において軍事物流の能力を飛躍的に向上させる革新的な技術を模索していました。
当社の技術力の実演
プラットホームへの実装に先立ち、仮想環境を使用してアルゴリズムのトレーニングを実施しました。これによってトレーニングにかかる時間とコストが大幅に低減し、高品質なデータを現実世界で取得する必要がなくなります。
Dstl(国防科学技術研究所)での運用テストでは、シミュレーションを活用し、自律走行車両が混雑した揚陸港で物資をどのように輸送するかを紹介しました。
複雑で動的な環境における自律行動エンジンの動作について、バーチャル空間で実証した後、デモ用のロボットでの現実のシステム動作をイベント来場者に向けて実演しました。
技術の限界に挑戦
当社の自律行動エンジンはAIを応用したナビゲーションとカスタム強化学習を組み合わせたものです。人間の行動から学習して人が進む先を予測し、判断した結果によって次の行動を決めます。
これはリアルタイムで処理されるため、最小限のダウンタイムでロボットは停止せずに最短の経路を進むことができます。ここで留意したのはロボットに非人間的な動作をさせないということでした。これにより、同じ環境で行動する人に受け入れられやすくなり、信頼性が高まります。
「国防科学技術研究所(Dstl)のチームでは、国防安全保障アクセラレータ(DASA)へのデモが、ロボット制御によるシステムと人間との安全な共存について、非常に有用であることを確認しました」

人間らしさを備えた自動化
軍のサプライチェーンにおける物流拠点、倉庫、各種施設は常に混雑し、変化の激しい環境です。 そこでは人員、車両、機械式積載装置が絶えず稼働しています。
あらゆる自律システムは、こうした複雑な環境に適応しつつ、迅速かつ信頼性の高い運用が求められます。 当社の技術は人間のように混雑をうまくすり抜け、周囲の動きを予測しながら最適なルートを選ぶことで、この課題に応えます。
近接センサーを使用し人が近づいたときにロボットを停止させる一般的なアプローチとは異なりますが、そうした従来の方法では混雑した環境では進行が妨げられてしまいます。

軍事物流の自動化
このイノベーションは、国防科学技術研究所(Dstl)を代表して国防安全保障アクセラレータ(DASA)が実施したコンペである「Right on Time:軍事物流の自動化」に参加する形で実施しました。その有効性が認められただけでなく、主催者からシステム動作の保証と適切な安全対策の開発に主な関係者が関心を寄せているというコメントもありました。
さらなる試験の実施と追加機能の搭載が必要であるとの認識が共有され、当社でも同様の見解持っており、現在協議を進めております。
「Logistic Technology Investigations(LTI:ロジスティクス技術調査)ではDstlが試験的に検討している広範な技術領域に関して、優れた知見が得られました。非常に印象的であったのはこの活動全体を通じて開発してきた技術や開発コンテストの内容が、現在直面している物流やエンジニアリングの中心的な課題に直接適用できるものであるということです」

他産業分野の知見を取り入れた自動化
今回のソリューションは本来、テーマパークや空港など混雑した環境でのロボットのナビゲーションを想定したものでした。
DASAプロジェクトは当社にとって防衛分野における物流の自動化に関連する用途でその有用性を実証する正に絶好のタイミングで始まりました。
プロトタイプと技術のフレームワークについて、その場でのフィードバックを受けられる機会にもなったため、実に有用な取り組みになりました。
「防衛関連の幅広い分野の200人もの参加者から、非常に好意的な反応をいただきました。このようなシステムの必要性とメリットを認めていただけたと思います。躊躇したり方向を変えたりする動作が人間のようだというコメントをいただきました。ただ停止して障害が動くのを待つのではなく、常に進み続けながら最速ルートを見つけようとする動作も確認いただきました。混雑した場所では、こうした動作で劇的に配送時間が短縮できると示すことができました」