ケーススタディー
Daré Bioscience社のIntelligent Drug Delivery System(以下、IDDS)は、長年のイノベーションを基盤に、患者ケアのあり方を大きく変え、ドラッグデリバリーの未来に新たな基準を示すことを目指したプラットフォームです。
この画期的なプラットフォームは、精密な薬剤送達、体内埋め込み型電子デバイス、安全性の高い接続機能、そして患者自身による操作性を一つのデバイスに統合しています。さらに、特定の適応症では、最長10年分の薬剤を保存することも可能です。このインテリジェントで適応性の高いシステムにより、患者が自ら治療を管理できるようになることで、患者中心でテクノロジー主導の医療における新たな時代の幕開けとなる可能性があります。
変化する患者ニーズと医療市場に応える画期的なイノベーション
Daré 社の画期的な IDDS は、まさに絶好のタイミングで登場しつつあります。いま患者は、負担の大きい治療計画に自分の生活を合わせるのではなく、自分の生活に寄り添う治療(ソリューション)を求めるようになっています。こうしたニーズの高まりは、医療機関の負担を軽減し、ケアを患者の自宅へ届ける方向へと変化しているヘルスケアおよびドラッグデリバリー分野の動きとも重なっています。
近年の業界におけるセンシング、接続性、データアナリティクスの進展は、このイノベーションを臨床へと前進させるための「最後のピース」となり、Daré 社が当社と連携して野心的かつ真に新規性の高いソリューションの開発に踏み出すきっかけとなりました。キャップジェミニのディープテックの中核を担う存在として、ケンブリッジコンサルタンツが真価を発揮するのは、テクノロジー、セキュリティ、規制が交差し、既存技術の応用ではなく「発明」が求められる領域です。
この技術は、治療のモニタリング、調整、停止を遠隔で行える、革新的な新しいケアモデルの実現を目指して設計されています。単なる利便性にとどまらず、プライバシー、アクセスのしやすさ、そして自由度の向上という価値を患者と医療機関にもたらし、治療のあり方を根本的に変える可能性があります。
「埋め込み型デバイス自体は以前から存在していましたが、Daré 社の IDDS技術では、電気機械的な側面が加わることで、全く新しい可能性を開きます。たとえば投与をオン・オフできたり、通信機能と組み合わせたりすることで、文字通りまったく新しい治療のかたちが実現できるのです。」
治療領域横断型の患者中心のドラッグデリバリープラットフォーム
Daré社 の IDDS プラットフォーム技術は、従来のドラッグデリバリーデバイスのように一つの薬剤や適応に限定されず、複数の薬剤を長期間にわたり保存・送達できるよう設計されています。また、注射に相当する投与量、持続放出、患者の生理状態や疾患の進行に合わせた同期投与など、多様な投与形態に対応できる仕組みです。さらに、リアルタイムの接続機能により、患者と医療者が遠隔で治療をモニタリングし、必要に応じて調整することが可能となります。
この仕組みにより、単一の埋め込み型デバイスで幅広い患者集団に治療を届け、長期的でパーソナライズされたケアの実現が期待されています。たとえば乳がんサバイバーの方であれば、これまで5年間で60回以上必要だった月例の通院を、このデバイス1つで置き換えられる可能性があります。不妊治療では、IDDS が備える独立した薬剤リザーバーにより、単一のデバイスから複数の治療薬を必要なタイミングで正確に投与でき、これまでの複数回の注射を不要にします。避妊の領域では、最大10年分の薬剤を保存でき、家族計画に合わせて生殖に関する選択を患者自身でコントロールできる可能性が広がります。
頻回の注射が必要となる慢性の代謝性疾患では、在宅で継続できる長期治療が患者の負担軽減につながります。たとえばパーキンソン病の患者では、夜間の自動投与により、朝の投薬が効き始める前に起こる「オフ」症状を予防できる可能性があります。
このような例は枚挙にいとまがなく、Daré社 の IDDS プラットフォームは、日常生活を妨げることなく継続的な治療を自身のペースで管理できる自由度と柔軟性を患者にもたらす鍵となることが期待されています。また、生活の質の向上に加えて、ケアを支える家族や介護者の負担軽減にも寄与すると考えられています。
「Daré 社の技術成熟度は、現在の市場において他社を大きく引き離しています。ドラッグデリバリー分野でも、これほど高度で複雑な技術は極めてまれで、まさに最先端といえる水準です。」
バイオロジーとエンジニアリングが交差するディープテック
Daré 社の IDDS の中心には、単一の医療デバイスとしては極めてまれな、先端技術の革新的な融合があります。本デバイスは微小電気機械システム(MEMS)を基盤とし、独立した薬剤リザーバーを複数備え、それぞれが電子的制御によって必要に応じて正確な用量を投与できる仕組みとなっています。
また、このプラットフォームは 接続型システムとして設計されており、体内に埋め込まれた状態でもデバイスの動作や機能データを送信できます。これらのデータは無線で医療者に送信でき、治療のモニタリングやパラメータの調整、必要時の治療の一時停止を遠隔で行うことを可能にします。さらに、本システムは埋め込み型ドラッグデリバリーでは前例のない制御性を備え、患者にこれまでにない高い自律性をもたらすことが期待されています。
このような機能を実現するためには、人体という過酷な環境下でも確実に動作する、高い信頼性を備えた小型無線通信システムが不可欠です。電子デバイスは性能を維持して患者の安全を確保するために、体内で最長10年にわたり機能し続ける必要があります。同時に、送信されるデータは厳重に保護され、患者のプライバシーを守るとともに、不正アクセスや投与操作を防止しなければなりません。
こうした複合的で高度な要求に応えるディープテックこそ、当社が強みとする領域です。埋め込み型電子デバイス、先進センシング、ワイヤレス接続、データサービス、ソフトウェア安全性、サイバーセキュリティ、そして製薬技術を統合することで、これまでにない世界初となるソリューションを創出しています。
「ケンブリッジコンサルタンツとのパートナーシップによって、IDDS プラットフォームとそのコンセプトを次の段階へと引き上げることができました。彼らの深い技術的専門性と的確な指導がなければ、この製品が今のレベルに到達することは決してなかったと強く感じています。」
多分野が交差する技術的課題

5Gとワイヤレスコネクティビティ

最先端の情報処理

デジタルトランスフォーメーション

医療機器

製薬
イノベーションと共通のビジョンに基づく長期的なパートナーシップ
IDDS コンセプトの野心性と複雑さを実現するには、アクティブ埋め込み型医療機器や、安全性が最重要となるソフトウェア、そしてコネクテッドヘルスシステムに関する深い専門性が求められました。こうした要件を踏まえると、当社はまさに最適な技術パートナーでした。さらに、この取り組みは、世界初となるテクノロジーを創出し、先行者優位を切り拓くという当社のディープテック戦略とも強く一致するものでした。
Daré 社とケンブリッジコンサルタンツの戦略的パートナーシップの始まりは、実は IDDS よりもはるか以前に遡ります。当社のボストンオフィスは、MIT のボブ・ランガー氏の研究室に端を発する技術コンセプトに、約20年前の開発初期から関与していました。そして 2018年、同社が臨床コンセプトをスケーラブルで規制要件に対応した IDDSへ進化させようとしたことを契機に、現在の協業フェーズが始まり、この技術に関する両社の協業は、一つのサイクルを描く形で結実しました。
パートナーシップとプロジェクトの拡大に伴い、当社の役割は設計支援にとどまらず、初期段階での資金調達支援や助成金関連の技術開発、さらには継続的な研究開発における協働へと拡大していきました。こうした積み重ねを通じて、両社の関係は、レジリエンスとワンチームの精神、そして患者ケアの向上という共通の使命を土台とした長期的なパートナーシップへと発展してきました。
「Daré の IDDS 技術においては、革新的なベンチトップのコンセプトを、商業的にスケール可能で、サイズ、快適性、使いやすさ、ドラッグデリバリーといったあらゆる要件を満たす形へと昇華させるために、ケンブリッジコンサルタンツと協業してきました。それら全てを統合していくプロセスにおいて、同社との関係に大きな期待を寄せていました。」
世界的なインパクトを見据えたドラッグデリバリープラットフォーム
この画期的な治療領域横断型のドラッグデリバリープラットフォームは、インテリジェントな埋め込み型ドラッグデリバリーの分野で、Daré 社を真のパイオニアとしての位置づけへと後押しします。既存のドラッグデリバリーシステムの段階的な改良にとどまらず、まったく新しい医療アプローチを提示し、将来的にはドラッグデリバリー市場において他に類を見ない革新的な治療様式となる可能性を秘めています。
このプロジェクトの中心に常にあったのは患者であり、将来最大の恩恵を享受するのもまた患者です。継続的な治療に、医療者による遠隔モニタリングと患者自身の操作性を組み合わせることで、同社の IDDS は従来の方法では実現できなかった新たな価値を提供することを目指しています。特に、長期治療が必要で、医療資源が限られる地域や遠隔地で暮らす方々にとって大きな恩恵となり得ます。
さらに、 女性の健康、がん領域、神経疾患など幅広い領域での応用が期待されることから、Daré Bioscience社とケンブリッジコンサルタンツは、インテリジェントな遠隔治療が当たり前になる未来に向けて道を切り拓いています。市場を変革し、患者ケアを再定義し、世界中で人々の生活を改善する——その未来の実現に向けて、両社はこれからも歩みを進めてまいります。




