人間中心設計のイノベーションが、iFデザインアワードで最高評価を獲得

作者 | 2026年3月16日

ケンブリッジコンサルタンツにおけるディープテック・イノベーションへの取り組みは、ひとつのシンプルな問いから始まります。先進的な技術は、どのようにすれば人々の暮らしを本質的に良くできるのか。そして、私たちが解決しようとしている「本当の人間の課題」とは何か。

この考え方こそが、私たちのディープテックマインドセットの中核にあり、日々ともに働く科学者、エンジニア、デザイナー、ストラテジストたちを導いています。私たちの目標は、技術的な専門性、ユーザーへの深い理解、市場に関する知見を結集し、人々の生活や社会に大きな前向きの変化をもたらす製品や体験へと昇華させることです。

こうした「ディープテック×人間中心設計」という思想は、世界的にも高く評価され、iFデザインアワード2026において3件の受賞を果たしました。その中には、全応募作品の1%未満にしか授与されない、栄誉あるiFゴールドアワード(最高評価)も含まれています。

iFゴールドアワードは毎年、分野を超えて最も優れたデザインイノベーションを称える賞です。今年、当社のデザインコンセプトは、AppleやGoogleといった世界を代表するテクノロジー企業と並び、ゴールド受賞作品に選ばれました。

この受賞は、デザインチームにとって大きな喜びであり、誇りでもあります。しかしそれ以上に重要なのは、ユーザーを起点とするデザインアプローチこそが、私たちのディープテックの価値の中核であることが改めて示された点です。私たちにとって、どれほど高度な技術であっても、実際の人間のニーズや体験と結びついてこそ、本当の価値を持つのです。

今回受賞した3つのデザインコンセプトは、医療、生活者向け体験、音楽という異なる分野において、この人間中心のディープテックマインドセットをそれぞれの形で体現しています。

iFデザインによるヨーロッパNo.1評価を獲得

当社は、次世代製品のコンセプト部門において、 ヨーロッパNo.1のコンサルティングファーム としての地位を維持するとともに、 界でも第2位にランクインしたことを大変誇りに思います。本評価は、複合的なエンジニアリングおよび先端科学と、実際のユーザーニーズを結び付ける当社独自のイノベーションアプローチを裏付けるものです。

当社の成功は、人間中心設計をディープテックの領域へ徹底的に適用し続けてきた取り組みに支えられており、未来のブレークスルーを、革新的であると同時に直感的にも優れたものにしています。

当社のゴールドアワード受賞プロジェクトが、子宮頸がん検診の体験を問い直す

Forme cervical screening device

iFゴールドアワードは、子宮頸がん検診の体験そのものを変革することを目指して構想された、私たちの 子宮頸がん検診デバイス 「Forme」に授与されました。

子宮頸がん検診は、がんの予防・早期発見において極めて重要な医療行為です。しかし一方で、検査が「不快そう」「侵襲的」「恥ずかしい」と感じられることから、受診を先延ばしにしたり、避けたりする人が少なくないのが現状です。私たちは、この課題は単なるデザイン上の問題ではなく、受診率や健康アウトカムにも影響を及ぼしうる重要なヘルスケアの課題であると捉えました。だからこそ、臨床的な要件だけでなく、検査を受ける人の感情や心理的体験までを理解し、それらの両方に応えるユーザー中心設計が不可欠だと考えました。

Formeでは、利用者の視点から検査体験全体を再構築しています。従来の金属製の器具に代わり、やわらかく手持ち可能なデバイスを採用することで、身体への侵襲を最小限に抑えながら、細胞の観察・採取を可能にしました。親しみやすい外観の内側には、高度な機構が組み込まれており、さまざまな身体構造に対応しつつ、医療上求められる視認性を確保しています。

さらに重要なのは、検査中の「人と人との関わり方」そのものを見直している点です。内蔵されたカメラにより、医師や医療従事者は不自然な姿勢を取ることなく、患者と向き合ったまま検査を行うことができます。これにより、患者の尊厳が保たれ、不安の軽減にもつながります。このような一見小さな工夫が、検査というストレスを伴いやすい体験において、安心感や主体性をもたらす大きな違いを生み出すのです。

子宮頸がん検診は命を救う可能性のある重要な医療行為である一方、身体的にも心理的にも負担の大きい、侵襲的な体験となり得ます。本デバイスは、そうした繊細な医療体験に対し、共感と思いやりをもって向き合っています。人間工学に基づいたハンドルは医療従事者の操作性を高め、やわらかく親しみやすいフォルムは検査を受ける人の不安を和らげます。これは長年求められてきたイノベーションであり、細部にまで配慮と高い知性が行き届いた形で実現されています。

iFゴールド審査講評

iFゴールドアワードの審査員は、本デバイスに見られる共感とエンジニアリングの融合を高く評価し、「思いやりと知性をもって実現された、長年待ち望まれてきたイノベーションである」と評しました。

私たちにとって、この評価は、ユーザー中心設計が、たとえ最も繊細な臨床手技であっても、その体験を大きく変革できることを示す力強い実例です。

airBrewで、先進テクノロジーを自然で直感的な体験に

airBrew Nitro Drinks Infusion System

カフェクオリティのニトロドリンクを自宅で楽しめるように設計されたコンセプト、「airBrew ニトロドリンク注入システム」も、今回アワードを受賞しました。

なめらかな口当たりと美しい泡立ちで人気のニトロドリンクは、これまで専門的な機器や使い捨ての窒素カートリッジを必要としてきました。airBrewは、空気中から窒素を生成する仕組みを採用し、抽出・注入・提供までを一体で行うコンパクトなシステムとして、この体験を新たに再定義しています。

airBrewの内部には高度で複雑なエンジニアリングが詰め込まれていますが、それを感じさせない、シンプルで美しいユーザー体験を実現しています。こうした「複雑さを裏側に隠し、使う人には心地よさだけを届ける」バランスこそが、私たちの人間中心設計の特徴であり、難しいプロセスを直感的で楽しい体験へと変えていくアプローチの象徴です。

新しい楽器のかたち「Tuuli」を創り出す

airBrew Nitro Drinks Infusion System

3つ目の受賞コンセプトである 電子トロンボーン「Tuuli」は、デザインによって人々の音楽の学び方や体験のあり方をどのように変えられるかを探る試みです。若い世代を中心に、従来の金管楽器への参加が減少するなか、Tuuliはより親しみやすく、魅力的な選択肢を提示します。

この電子トロンボーンには、演奏によって生まれる音を身体で感じ取れるループ型のフィードバックシステムが搭載されています。奏者は、自分の動きと音とのつながりを物理的に感じることができ、その触覚的なフィードバックが、より直感的で没入感のある学習体験を生み出します。

また、モジュール式のデザインにより、楽器は演奏者の成長とともに進化していきます。実験的な試みや創造性、そして個人ならではの表現を促すことで、音楽との新しい関わり方、そして表現の可能性を大きく広げています。

なぜユーザー中心設計がディープテック・イノベーションの鍵となるのか

これらのプロジェクトは、医療、消費者向け製品、音楽と分野は異なりますが、いずれもユーザー中心設計という共通の思想に基づいています。

私たちのトランスディシプリナリー(分野横断型)なチームは、プロジェクトの初期段階から、それぞれの専門性を持ち寄って協働します。デザイナーがエンジニアやテクノロジストと密接に連携し、最先端の技術力を、人にとって魅力的で意味のある体験へと変えていくことで、複雑な技術的課題にも、常にユーザー視点を失うことなく向き合うことができます。

プロジェクトの出発点が、ユーザーの課題であっても、新たに生まれつつある技術であっても、あるいは独自の技術的強みであっても、私たちはその可能性を並行して探ります。想定される活用シーン、ユーザーのニーズ、技術的な実現性を同時に検討し、それらが交わるポイントを見極めることで、技術的に実現可能であると同時に、使う人にとって本当に意味のある解決策を生み出します。

その結果生まれるのが、単に技術の可能性を示すだけではなく、人々が理解し、信頼し、直感的に使いこなせるディープテック・イノベーションです。

ここにこそ、ユーザー中心設計がインパクトと価値を生み出す原動力となる理由があります。ユーザーのニーズに即した製品は、受け入れられやすく、正しく使われ、より良い成果につながります。それは、医療分野での受診率向上であったり、新たな創造表現の可能性であったり、あるいは日常体験の質を高めることかもしれません。

「意味のあるデザイン」が評価される理由

私たちのチームにとって、今回のiFデザインアワード受賞は大きな誇りであると同時に、なぜこの仕事に取り組んでいるのかを改めて思い出させてくれる出来事でもあります。真のブレークスルーとなるデザインは、見た目の美しさや技術の新しさだけで生まれるものではありません。そこには、人が直面している現実の課題を深く理解し、共感し、創造性とエンジニアリングをもって解決しようとする姿勢があります。

ディープテックと人間への洞察が融合したとき、私たちは本当に意味のある、かつ実現可能なソリューションを生み出すことができます。それこそが、ケンブリッジコンサルタンツのデザインを特徴づけるマインドセットであり、これからも私たちが世に送り出していくイノベーションを形づくり続けていく考え方です。

専門家

ライ・チュー・タン
メディカルテクノロジー事業本部 デザイン統括責任者 | プロフィールを見る

ライ・チュー・タンは、ケンブリッジコンサルタンツにおいてメディカルイノベーションに注力するデザインチームを率いる。医療機器開発において18年以上の経験を有し、製品のユーザー体験向上を目的としたデザインとイノベーションを推進。専門分野は、インダストリアルデザイン、UIデザイン、パッケージデザイン、情報デザインと多岐にわたる。

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